• 松下公治

成人鼠径ヘルニアで手術しないとどうなるか?

最終更新: 7月5日

 成人鼠径ヘルニアの治療方法は、手術以外にありませんサイトに術中写真を掲載したとおり、体表から膨隆している原因は、お腹の壁(腹壁)に穴が開いていて、そこからお腹の中にある腸や脂肪(大網)が脱出していることです。よって、穴を塞がない限り治ることはなく、成人の場合は自然に塞がることもありません。では、手術しないで放っておいたらどうなるのでしょうか?



◎日本の鼠径ヘルニアガイドラインは?

 まずは日本の鼠径ヘルニアガイドラインである「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2015」を見てみましょう。要点は以下の通りです。

成人鼠径ヘルニアは自然治癒しない

・嵌頓している場合や嵌頓の危険が高い場合は、全例手術が推奨される。

嵌頓の危険が低く症状の軽い場合も、治療は手術である。ただし、十分にリスクを説明し理解した上で、経過観察しても許容される嵌頓の発生率は年間で1%程度であるが、嵌頓時の緊急手術での死亡率は4.0-5.8%である。女性は嵌頓のリスクが高い大腿ヘルニアの併存がある。

経過観察した場合は、痛みなどの症状で年に10%程度が手術となる

◎国際的な鼠径ヘルニアガイドラインは?

 次に、国際的な鼠径ヘルニアガイドラインである「International guidelines for groin hernia management(2018年)」を見てみましょう。これは、ヨーロッパヘルニア学会(EHS)、国際内視鏡ヘルニア学会(IEHS)、欧州内視鏡外科学会(EAES)、アメリカヘルニア学会(AHS)、アジア太平洋ヘルニア学会(APHS)、オーストラリアヘルニア学会、アフリカ・中東ヘルニア学会(AMEHS)の7学会が共同で発表したもので、世界のスタンダードと言ってもいいガイドラインです。要点は以下の通りです。

・男性の無症状または軽症の鼠径ヘルニアでは、絞扼などの合併症が少ない。

・男性の絞扼性鼠径ヘルニアの緊急手術は、予定手術より死亡率が高い(10-20倍)。

症状の軽い男性の鼠径ヘルニアでは、大部分が痛みの悪化で手術となる。ただし、注意深く経過観察することは、合併症が少ないので安全である

手術のタイミングは社会的環境や仕事の都合や健康状態を考慮する。予定手術は緊急手術よりも死亡率が低いことを考慮する必要がある。

◎結局どうしたらいいか?

 繰り返すようですが、鼠径ヘルニアの治療は手術以外にありません。穴が開いているので、塞ぐしか治す方法がないのです。ただし、ガイドラインでも述べられているように、症状が軽ければ、嵌頓や悪化のリスクを十分に理解した上で、慎重に経過をみることも許容されます。ただし、毎年10%の人が痛みなどの症状悪化のために手術を受けることになるので、結局は手術になることが多く、症状が軽くて手術が容易なうちに手術した方がいいかもしれません。術前に痛みが強いと、術後にも痛みが残りやすく、悪化して手術が大変だと、合併症のリスクも増加します。また、嵌頓の緊急手術は死亡リスクが高いだけでなく、開腹手術になることが多く、大抵命は助かりますが、治療には時間もかかります。

 私の意見としては、「結局は悪化して手術になることが多いし、稀とはいえ嵌頓で緊急手術になるのは嫌だから、軽いうちに手術して治してしまった方がいい。」と考えています。

◎関連した当サイトのページ

鼠径ヘルニア(脱腸)

鼠径ヘルニア(脱腸)の治療

鼠径ヘルニア(脱腸)のよくある質問

鼠径ヘルニア(脱腸)の日帰り手術

鼠径ヘルニア(脱腸)の日帰り手術の動画

0回の閲覧

© 2016 all rights reserved by KM Surgery

  • ブログ
  • Twitter
  • YouTube
  • Facebook